ドラマ

足掻く奴らを笑えー「ロープ~戦場の生命線~」ネタバレ感想ー

「ロープが無いなら、ホームセンターに行けばいいじゃなぁ~い♪」とか言わないであげてください。ここは紛争地帯なので。彼らにとっては、これが当たり前。文句も言わずに、ただ粛々と行動し続ける姿が泣かせます。彼らはやってられないという気持ちを押し殺し、シニカルさや悪ふざけでその日その日を乗り切っていくのです。
サスペンス

あれ?君たち、ひょっとして何か怒ってる?~「ザ・メニュー」ネタバレ感想~

一見したところはワンシチュエーションスリラーですが。これが笑いに見えないのは、あなたが“彼らの側”、つまり奪う者だからかもしれません。 最近見た映画だと「ソルトバーン」がこれに近い雰囲気だったような。 確実にそこに立ち昇っているのに、奪う者たちは与える側の反逆の狼煙を、それと認めようとしない。 だって自分たちは特権階級だから。そういう気分に浸りきって、危険を察知する本能が鈍ると、こういうことになりますよ、と。
ドラマ

悲しみは、長い時間をかけて届く手紙~映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を思う」ネタバレ感想~

とても抒情性があって美しい邦題ですが、実は原題はまったく正反対なイメージの「Demolition(破壊)」なんですね。 この場合の「破壊」は、映画「ファイト・クラブ」でブラット・ピットがやっているアレです。今のクソみたいな人生を徹底的に破壊して、新しいものを創造する。 ブラピがやってるのはほぼ破壊のみで、映画のテイストもだいぶ違いますが…… 描き方が違うだけで、「ファイト・クラブ」と「雨の日は~」は、ほとんど同じテーマを扱っていると思います。
アドベンチャー

より卑しく、より気高く~「グリーン・ナイト」ネタバレ感想~

ガウェインは私たちと同じ普通の人間として、死に恐れ慄き、斧が迫ってきたときには怯み、子どものように涙をこぼしました。そんなにも恐れていた死を、最後には受け入れる勇気。これが気高さではなくて何だと言うのでしょうか。
サスペンス

まけいぬたちのいるところ~「ドント・ウォーリー・ダーリン」ネタバレ感想~

ただ最後にもう1点感想として付け加えておきたいのが、なんで男たちが仮想現実の世界に妻を連れて行ったのか、その心理こそがもう情けなさの極致だよねっていう話です。 ただ心地良い夢の世界で生きていくだけなら、別に自分1人でビクトリーしとけばいいわけですよ。
歴史

16世紀の高貴なるシスターフッド~「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」~

プライドの高いメアリーと、コンプレックスの塊であるエリザベス。この映画を観て、自分がどちらにより共感できるかを確かめてみてもいいかもしれません。16世紀だろうと令和だろうと、女の人生は楽じゃないです、ほんと…。
ドラマ

アメリカという辺境に流れるジャズの音~映画「Rainレイン」ネタバレ感想~

愛が損なわれた人生、そこでもがく人たち。そして静かで哀切な音楽。私が一番好きな小説家、レイモンド・カーヴァーの世界を強く思い出させる映画でした。カーヴァー好きの方はぜひ、絶対にハマります。(この映画はロシアの国民的作家、チェーホフの作品を基...
ラブストーリー

全員ぶっ飛ばせ、私たち以外~「ディナー・イン・アメリカ」ネタバレ感想~

久しぶりにぶっ飛びました!いや、めっちゃ面白い映画。お腹抱えて笑ってしまった。こういう完全に針が振り切れてる映画を作ってくれるから、アメリカ映画って大好きよ。日本でこの手の映画とかドラマ作ったら、完全に少女漫画のノリになっちゃうし。美人女優...
ドラマ

~最後に残ったのはサンフランシスコへの愛~「ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ」

金持ちの白人だらけになったこの街に、自分は最後の黒人としてしがみついてやる。なぜなら俺は特別な存在だから。 ジミーのプライドや戦う気力、この街はまだ自分には背を向けていないという信念。すべては“祖父が自分で建てた家である”という、その一点にかかっていました。 親友のモントはジミーの信念に敬意を持ち、いつも行動を共にして、あらゆる場面で力を貸してきました。
サスペンス

この世界に汚される体験を描く~「ペーパーボーイ 真夏の引力」~ネタバレ感想

それは誰でも大人になる過程で必ず通らなくてはならない通過儀礼で、そこをくぐり抜けたときにどのような人間になっているのかが、その人の本質を決めるといっても過言ではありません。