近未来SF

このルールは誰のためのものか~「ガタカ」ネタバレ感想~

主人公のヴィンセントは、信仰に篤い両親の考えにより、遺伝子操作を経ずに自然のまま生まれました。結果として、近視や心臓疾患という遺伝的ハードルを負うことになり、「新下層階級」に属して、進学や就職で差別的扱いを受けるようになります。
近未来SF

ノイズを取り除いた、生の本質~「わたしを離さないで」ネタバレ感想~

これは原作にはない言葉だったと思いますが、カズオ・イシグロが書こうとしたことの本質に迫っていて、私たちにこの物語をどう受け止めればいいかを丁寧に説明してくれているような気がしました。 イシグロはこの小説において、何らかの理由で短い一生を運命づけられている若者たちを書きたかったと語っていましたが、それによって私たちに「クローン人間って可哀そう」と思わせたかったわけではないでしょう。
サスペンス

「死」との付き合い方が問われる~「イニシェリン島の精霊」ネタバレ感想~

色んな見方があると思いますが、私はこの作品に出てくる4人の登場人物が、「死との向き合い方」の4パターンを体現しているように見えました。 まず主役の2人。コルムとパードリックは、私から見るとこんな感じ。 ①コルム:死が近づいてきたことで、直視せざるを得なくなって焦っている。「死」に完全に支配されている人間。 ②パードリック:いつか死ぬことは分かっているが、できるだけそのことは考えたくない。「死」から逃げ回っている人間。
ドラマ

共同体から切り離されて、人はa real painになる~「リアル・ペイン」ネタバレ感想~

タイトルそのまま、pain=苦痛についての物語です。 ただし、この映画で扱っているのは過去のユダヤ人が感じた苦痛ではなく、現代に生きる人々が感じる苦痛。より正確に言うと、本来は苦痛として感じるべきなのに、現代ではただ「厄介な何か」として扱われている感情についてです。
青春

スケボーで何かが変えられると信じていた~「mid90s」ネタバレ感想~

スケボーというのはただの遊びやスポーツではなく、ライフスタイルそのもの。ストリートファッションや反体制的な価値観とも結びついていて、スティーヴィーのような少年にとっては「自分とは何か」を丸ごと説明してくれるパッケージのようなものです。
コメディ

どの時代にも、子どもがいた~「ジョジョ・ラビット」感想~

彼がナチスなのはこの時代のドイツに生まれたから。彼がヒトラーに憧れるのは、周りがそう仕向けたから。環境がすべてであって、彼の責任じゃないってことは、映画を見れば一発で分かります。
ドラマ

ジャック・ケルアックの道を、ハーレーで駆け抜ける~「ザ・バイクライダーズ」ネタバレ感想~

モーターサイクルクラブを題材にした写真集に着想を得て、架空のクラブ「ヴァンダルス」の結成から衰退までを描いたストーリーです。メンバーは皆けっこういい年したオッサン達なんですが、何だか青春の儚いきらめきを感じさせます。
アドベンチャー

ドン・キホーテの愛を叫べ~「MUD」ネタバレ感想~

人を殺して指名手配されているというマッドは、誰がどう考えても危険な存在なのですが、エリスは彼が「すべては愛する女性のためにやったことだ」と言うのを聞いて彼に肩入れするようになります。
サスペンス

宇宙のように静か…そして空想が広がる~「ガガーリン」ネタバレ感想~

本当の意味での「home」として、私たちが心の拠りどころにしているのは、こうした共同体の記憶や思い出なのだと思います。自分がどこかに属していると感じるとき、その核にあるのは物理的な建物ではなく、今ではもう目には見えない場所や時間です。
ラブストーリー

お願いだから、僕だけを見ていて~「her/世界でひとつの彼女」ネタバレ感想~

つまり、サマンサは100%どっぷりとセオドアの世界の住人なのです。セオドアのために生まれた彼女には、自分独自の世界というものがない。セオドアの世界から学び、セオドアのためだけに思考する存在。セオドアにフルでコミットし、それを何ら不自然とは思わない恋人です。