同名の有名な映画作品のほうは、まだ未鑑賞です。
レニー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタジョーンズの「シカゴ」みたいな感じなのかな?
いつか観てみたいと思いますが、こちらはまったく別の2019年製作チェコ映画。
外見にコンプレックスを持った女の子の変身ストーリーなので、「プラダを着た悪魔」みたいなノリで鑑賞しましょう♪(注:アン・ハサウェイとは大分違います)
鑑賞のまえに
2019年製作/チェコ
時間:83分
監督:テレザ・コパコーヴァ
出演:エヴァ・ハクローヴァ、サビーナ・レムンドヴァなど
・太っている女の子がコンプレックスを乗り越えていく、女子共感系ムービー
・綺麗になっても男は救ってくれないというテーマも今っぽい
・ダンスのシーンはセクシーで魅力的で、女性が観ても楽しめます
あらすじ
ダンスが好きな小学校教師ベティのコンプレックスは、自分の太った体つき。学校の男子生徒からも自分の体型のことを侮辱され、深く傷つきます。
ある日、彼女は友人をバーレスクを披露する店に送り届けた際、1人のダンス教師に出会いました。彼女はベティの魅力を認めてくれ、バーレスクのメンバーにと誘います。最初は自分の体を舞台でさらすことに抵抗を感じるベティでしたが、彼女に励まされることで次第にバーレスクダンスの楽しさに目覚めていきました。スレンダーなバーレスクの女性たちに混じって、懸命にダンスの練習に励むベティ。やがて服装も女性的で華やかになり、性格も以前より明るく積極的になっていきます。そして職場の同僚の男性からのアプローチを受け入れて交際がスタートし、すべてが順調にいくかのように思われましたが…
感想
太っていると、人に見られるのが本当に苦痛です。ましてその体型を人からからかわれたりなんかした日には、「もう家から一歩も出たくない!」ってなります。
この映画の主人公はかなりのおデブさん。小学校1年生のクラスを教えている人気の先生ですが、自分の体型にはコンプレックスを抱えています。1年生の子供たちはとっても可愛いけれど、ティーンエイジャーのクラスに教えにいったときに、生意気な男子生徒に思いっきり体型いじりをされて、落ち込んでしまいます。その男子生徒も実は自分の身体のことで悩みを抱えていて、主人公がそれと知らずに悪口を言ってしまったために、反撃されただけだったんですけどね。でも最初はそんなこと知らないから、デブいじりに憤る主人公と私。デブは毎日生きてるだけで戦闘状態なんです、忙しいんです。
でもこの映画の主人公はふとしたきっかけから「あなたの体は美しい、自信を持って」と言ってくれる人に出会えて、自分のコンプレックスを乗り越えようとします。どのように乗り越えるかというと…ステージの上で服を脱いで、セクシーダンスを披露する。…いや、振り幅が大きくないですか?汗
このへんで主人公に感情移入していた私は振り落とされそうになりますが、でも主人公のありのままの美しさを認めてくれた人がそのセクシーダンス(バーレスク)の先生だったから、ある意味自然な成り行き。さらに主人公は元々ダンスが得意で、踊ることが大好きなのです。そのような背景もあり、すぐにバーレスクの世界に魅了されます。
そして迎えた初めての舞台。主人公は後でそのときのことを振り返り「人生最悪の10分間だった」と言っていました。舞台のうえで大勢の人に自分のぶよぶよの体を晒す…そりゃ最悪ですよね。恥ずかしいし、何より怖い。でも「人から笑われるかもしれない」と想像することによる恐怖は、あくまでも本人の頭の中だけにあるものです。実際にはそうならなかったとき、予想に反してみんなに受け入れてもらえたとき、ずっと怯えていたことの反動であるかのように、自信がつき新しい自分になることができます。
この「勇気をもって一歩踏み出し、生まれ変わる瞬間」をクライマックスに持ってきている映画もたくさんあるでしょう。「フラッシュダンス」はその代表格かな?不朽の名作です、大好き。ただし「バーレスク」はそうじゃなかった。主人公が勇気をもって一歩踏み出し生まれ変わったそのあとに、どんな現実が待っているのかを、きっちり30分描き出しています。
まず、小学校教師でありながらニップレスで腰を振って踊る動画がYouTubeにアップされた結果として、職場を追われることになります。さらにずっと応援してくれていたイケメンの同僚には、実はただ遊ばれていただけだったと発覚します。極めつけは、バーレスクの演出家(?)の男性に「君は人前で演技するべきじゃない(デブだから)」と一刀両断されます。現実って厳しいよね……
そしてこれらの問題は、実は映画のラストでもほとんど解決していません。厳しい現実は続き、主人公はこれからもそれに向き合って闘っていかなくてはならない。じゃあ主人公が勇気を出して一歩踏み出したことは無意味だったの?というと、もちろんそうではないでしょう。
主人公は人前で堂々と自分の体を見せつけダンスを披露したことで、ちょっとだけ強くなりました。ちょっとだけ露出の高いファッションを楽しめるようになり、ちょっとだけ男性に対して積極的になり、ちょっとだけ母親の庇護下から出て外の世界で闘えるようになりました。そのちょっとだけが積み重なって、ラストでは強引にテレビのインタビューに乗り込んで、意地悪なことを聞かれても笑顔で気の利いた答えを返せるまでになりました。
客観的に見ればあいかわらずドツボな状況ですが、今や主人公はその現実と闘うだけの強さを持っています。ラブラブだと思ってた彼氏に本命彼女がいたことが発覚して間もないのに、インタビューで「(バーレスクに対する)彼氏の反応は?」と聞かれ「何にも」「何にも?」「だって彼氏いないし、ウフッ♪」っていうキュートな笑顔。これだけで「この女、強い…!」って同性なら分かりますよね。
そして主人公が一歩踏み出したその後も勇敢に闘っていることは、例の身体にコンプレックスを持った男子生徒の心にも響きました。主人公のインタビューの映像を見て微笑む男子生徒。テレビ局の帰りの車のなかで、主人公のスマホに男子生徒からのメールが届くラストシーンは文句なしの締めくくり方です。
あいかわらず無職だし、男運はないし、自分を敵視してるオッサンには最後まで「牛」呼ばわりされてるし。良いとこなしに見える主人公ですが、最後に男子生徒からのメールを受け取って良い表情をする彼女を見て、やっぱり「人生最悪の10分間」に勇気を出して脱いでよかったんだなって納得できました。アームストロング風にいうと「人類にとっては小さな一歩だが、一人の人間にとっては大きな飛躍だ」。
ちなみに、この主人公の強さと対比させるかのように、一人のメソメソ女が登場します。「私ぃ、別にバーレスクに興味ないんだけどぉ~」「彼に君は綺麗だ!とか言われると断れなくてぇ~」みたいなことを終始モソモソ言っています。(実際はこんな嫌なキャラではないです。笑)あげくの果てに、主人公がそれを励みに頑張っていた仕事を、横からかっさらっていく始末。
すごい美人だから、主人公よりダンスが下手でも努力してなくても受け身な姿勢でも、なんやかんやと周りがお膳立てしてくれるんですね。でもそれはそれで別にいいと思います。美人がちやほやされるのはそういうもの。細い女性が美しいとされる時代に太っていたら、男たちから悪い扱いを受けるのはそういうもの。
いい気はしませんが、所詮は他人からの評価ですしね。他人からの評価って実際はけっこういい加減です。昔は主人公みたいなパワフルボディが美しいとされた時代もありました。それは数多くの絵画作品を見れば分かります。時代が変わって、ほとんどの人がデブは見苦しいと思うようになった、ただそれだけのことなのです。それを本気で嫌だと思うなら、ダイエットなり整形なりすればいいだけですから。
ただし、「自分で自分を認める」ということは、他人からの評価とは違ってダイエットや整形では簡単に成し遂げられません。この映画の主人公のように、まず一歩踏み出し、その後「世の中バラ色みたいに見えたけど、結局私はデブキャラのままで何も変わってないじゃん!」という現実に打ちのめされ、それでもまだ地面に足を踏ん張って立っている自分を発見して、初めて本当の自信が得られるのだと思います。「もうデブでも負け犬でも何でもいいわ。私は自分が踊りたいから踊るんだよ、ちょっとそこどけ」みたいな。そうやって自分の欠点も現実もすべて受け入れたうえで、心を折られていないことが大事なんです。
メソメソ女は、美人だからこそ周りからの評価が自分のなかで大きなウェイトを占めるようになり、結果苦しめられていました。「綺麗だって言われたからバーレスクやってみた」「ブタみたいって言われたからテレビに出るの嫌になった」。その気持ちはよく分かるんですが、そうやって生きていって辿り着く結果に、自分で納得できるでしょうか?やっぱり人になんと言われても「これが私だ!」って言って蹴散らしていけるような、そんな強さが欲しい。
つまり、この映画の結論は「This is me(映画「グレイテスト・ショーマン」)」。
あれ、名曲ですよね。この映画の主人公みたいにドツボな状況になったときは、あの曲を聴いて己を奮い立たせようと思っています。笑
最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪
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