最近は学校の夏休みって短くなってるんですね。
8月の終わりまで休みを満喫していた世代の私は、今の子ども達に対してなんかちょっと後ろめたい気分…。
でも、今より学校が休みの時間が長くても、こんなワクワクする夏を過ごしたことはありませんでした。
今回は「スタンドバイミー」好きの人にもおすすめできる、「キングス・オブ・サマー」の感想です。
※今回はネタバレしてないので、未鑑賞の方にもぜひ!
鑑賞のまえに
2013年製作/アメリカ
時間:95分
原題:The Kings of Summer
監督:ジョーダン・ボート=ロバーツ
出演:ニック・ロビンソン、ガブリエル・バッソ、モイセス・アリサスなど
・画面は夏全開のまぶしさ!絶対に夏に観たい!
・「明るくてちょっとノスタルジックな青春映画が観たい」という人におすすめ
・あんまりにオシャレすぎる青春より、ちょっと垢抜けない主人公に共感できる
あらすじ
高校生のジョーとパトリックは、自分たちを支配し束縛しようとする親への不満から、家出を計画します。森に自分たちの力で家を建て、親に依存しない自給自足の生活を送ろうというものです。変わり者のクラスメイト・ビアジオも仲間に加わり、気ままな3人の暮らしが始まりました。食料の確保に四苦八苦しながらも、初めて味わう自由の感覚に酔いしれる少年たち。しかし、そこにジョーが想いを寄せるケリーがやってきたことで、少年たちの友情に亀裂が生じて…
感想
青春映画が大好きです。「あの頃ペニーレインと」「いまを生きる」「グッドウィルハンティング」「マイプライベートアイダホ」「シングストリート」「旅するジーンズと16歳の夏」「ホットサマーナイツ」。色んな雰囲気の青春映画があって、どれも好きです。
これといったお目当ての作品があるわけでなく、何となく映画が観たいという気分のときは、大抵青春映画のジャンルで何かいいのがないかな~と探してしまいます。そんな感じでアマプラを漁っているときに見つけたのがコレ、「キングス・オブ・サマー」。緑まぶしい森の中で、水に飛び込もうとして少年たちがジャンプしているポスター画像。もうそれだけでジャケ買い確定ですね。
でも実際に映画を観て感想を書きたくなったのは、これがキラキラのまぶしい青春映画とはちょっぴり違う味わいがある作品だから。何が違うかというと…
主人公たちが垢抜けない、ガキっぽい、そしてダサい。笑
森のなかでお手製の勇者っぽい剣を振り回して「色んな場所に名前を付けようぜ!『運命の森』とかさ」とか言ってはしゃいでいるんです。何か観てるこっちが恥ずかしくなって、お尻がむずむずしませんか?それももう17歳とかの年齢でですよ。「スタンドバイミー」のクリスのほうがよっぽど大人っぽくてクールだよ…
オシャレな青春映画だったら、同年代の登場人物はロックに目覚めて、パーティー三昧で女の子と色々経験して、ハイウェイで車やバイクを走らせてます。そういう映画だと周りを固めるキャラもちょっと悪くてかっこいい奴とか、学校で一番人気の女子とかね。とにかく華があるんです。
一方の「キングス・オブ・サマー」で抜群の存在感があるキャラは、もう見るからに宇宙人オーラが漂う、家出メンバーの一人・ビアジオ君。顔に泥を塗って体に葉っぱをくっつけて木にへばりつく擬態が得意技です。必要があってやってるわけじゃありません、多分。彼の趣味です。
このビアジオの奇人変人オーラが、主人公の親友であり恋のライバルという重要なポジションであるはずのキャラを完全に食ってしまっています。ヒロインにいたっては、映画を観終わったあとにはちょっとどんな顔だったかも思い出せない感じ。それだけ画面のなかでビアジオの色が濃い。笑(ちなみに登場人物が全員ビアジオで構成される青春小説が、森見登美彦の初期の作品ですね)
森の中で主人公たちがあれこれするときも、ビアジオの奇行が抜群に目立っています。多分主人公は家を飛び出してもうちょっとクールな生活に憧れてたのかな。森のなかで大きな金属製パイプ?みたいなものをリズムに合わせて叩き、友達とセッションする見せ場シーンも、画面の真ん中にビアジオが陣取り、そのパフォーマンスがメインになっている…。笑
ビアジオのことを最初は「メンバーに入れることになってしまった厄介者」みたいに扱っていた二人が、振り回されていつのまにか彼のペースに巻き込まれている感じにもクスっとなります。あれ、二人ともちょっとビアジオに染まっちゃってる?
大人になりたいけど子供っぽい。かっこよく見られたいけど、垢抜けない。
でも、私にとってはそれがこの映画の魅力なんです。同年代のみんながとっくに大人な夏を経験しているなかで、森のなかの自分たちだけの世界でいつまでも小学生の夏休みみたいなことをして遊んでいる。いわゆる青春を経験するその一歩手前の、まだ蝶々どころかサナギにもなれていない、芋虫の愛おしさ。
きっとこの主人公たちは高校生のあいだは芋虫のままで、大学に入ってから周りに一歩出遅れて本当の青春時代に入っていくんだろうなぁと思うと、何だかくすぐったいような、幸せな気持ちになります。私も高校時代はキラキラの青春には縁遠かったから、「キングス・オブ・サマー」の主人公たちに共感できるのかも。いや、勇者の剣を振り回して森の中で叫んだりはしてませんでしたけどね。笑(アメリカには“中二病”的な言葉ってあるのかな…)
とはいえ、この作品には青春映画の定番要素もしっかり詰め込まれていて、ベタな青春ものを楽しみたいという人をがっかりさせてしまうこともないと思います。ちょっと高嶺の花な女の子への片想い、友情の危機と再生、父親の支配への反抗と、ひと回り大人になって家へ帰る成長物語。すべての大人が楽しめる、ノスタルジックな要素がいっぱいです。ただ一つひとつが、ちょっとダサくて垢抜けないだけ。笑
主人公が垢抜けない青春映画のガールズ版といえば、「レディバード」でしょうか?人に語るほどの華々しさはないけれど、誰にでも大切な十代の日々の思い出がある。そして映画になれば、そこに自分を重ね合わせて共感できる人も沢山いると思うんです。これからはもっとこういうアメリカ映画が増えるといいな。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪
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